狼に関する寓話44話



タウンゼント1.オオカミと仔ヒツジ

? ある日のこと、オオカミは、群とはぐれて迷子になった仔ヒツジと出会った。オオカミは、
仔ヒツジを食ってやろうと思ったが、牙を剥いて襲いかかるばかりが能じゃない。何か上手い
理由をでっち上げて手に入れてやろうと考えた。
 そこで、オオカミはこんなことを言った。
「昨年お前は、俺様にひどい悪口を言ったな!」
 仔ヒツジは、声を震わせて答えた。
「誓って真実を申しますが、私はその頃、まだ生まれていませんでした。」
 するとオオカミが言った。
「お前は、俺様の牧草を食べただろう!」
「いえいえ、私はまだ、草を食べたことがありません。」
 するとまたしてもオオカミが言った。
「お前は、俺様の井戸の水を飲んだな!」
 仔ヒツジは悲鳴を上げて答えた。
「いえ。まだ、水も飲んだことがありません。……だって、お母さんのお乳以外は、まだ何も
口にしたことがないのですから……」
「ええい! もうたくさんだ! お前がなんと言おうとも、俺様が、夜飯を抜いたままでいる
とでも思っているのか?」
 オオカミはそう言うと、仔ヒツジに襲いかかった。
 
 暴君は、いかなる時にも、自分に都合のよい理由を見つけるものである。

Pe155 Cha221 Ph1.1 Ba89 Cax1.2 エソポ1.1 伊曽保2.11 Hou2 Charles1 Laf1.10
Kur1.13 TMI.L31 (Ba)


タウンゼント10.オオカミとサギ

 喉に骨が刺さったオオカミが、多大な報酬を約束してサギを雇った。というのも、口の中へ頭
を突っ込んでもらって、彼女に骨を抜いて貰おうと考えたからだった。サギが、骨を抜き出し、
約束の金を要求するとオオカミは、牙を光らせて叫んだ。 ?
「何を言ってやがる! お前は、もう俺様から、十分すぎる報酬を受け取ったはずだぞ。俺様の
口から無事に出られたのだからな!」 ?
?
悪者へ施す時には、報酬など期待してはならぬ。もしなんの危害も受けずにすんだなら、それで
よしとすべきである。

Pe156 Cha224 Ph1.8 Ba94 Cax1.8 エソポ1.5 伊曽保2.16 Hou5 Charles12? Laf3.9 Kur6.12
狐ラインケ3.11 TMI.W154.3 狐ラインケ3.11 (Aesop)


タウンゼント49.ヒツジの皮をかぶったオオカミ
 
 昔、あるオオカミは、餌を楽して獲ろうと、ヒツジの皮を被って変装した。そして、ヒツジ飼
の目をすり抜けて、牧場の中へと潜り込んだ。
 夕方、ヒツジ飼は、オオカミに気付くことなく、牧場の扉をしっかりと閉ざして帰って行った。
オオカミはほくそ笑んだ。ところが、その夜の内に、ヒツジ飼が、翌日の食糧を確保しようと戻
ってきた。そして、オオカミはヒツジと間違えられて殺された。

悪の栄えたためしなし。

Pe451? Hou39 Charles91 TMI.K828.1 (ニケポロス・バシラキス「弁論術の準備」1.133)


タウンゼント64.オオカミたちとヒツジたち

 ある時、オオカミたちが、ヒツジたちにこんなことを言った。
「君たちと我々の間に、恐怖と殺戮が蔓延しているのは何故か?……それは皆、イヌどものせい
なのだ。なぜなら、我々が、君たちに近づこうものなら、イヌどもは、我々に襲いかかって来る。
我々が君たちに何かしたとでも言うのか?」
 オオカミたちは、更に続けた。
「もし、君たちが、奴らを追い払ってくれるなら、我々と君たちの間には、和解と平和の協定が、
すぐにでも、結ばれるだう」
 ヒツジたちは、条理をわきまえぬ者たちばかりだったので、オオカミに簡単に欺かれ、イヌた
ちを追い払ってしまった。そして、守りのなくなったヒツジたちは、オオカミたちに、殺戮の限
りを尽くされた。

Pe153 Cha217  PhP Cax3.13<伝> エソポ<伝> 伊曽保1.10 Laf3.13 TMI.K2061.1.1 (Aesop)


シャンブリ218 狼どもと羊の群と牡羊

 狼どもが使者を羊の群れに遣って、犬どもを自分たちが受け取って殺すという条件で、彼らと
永遠の平和を結ぼうと言ってやりました。馬鹿な羊どもはそれをする約束をしました。しかし或
る歳とった牡羊が「犬どもが私の番をしていてくれてさえ、私は危険なしに食べていることはで
きませなんだのに、どうして私はあなたたちを信じて一緒に暮らすことができましょう。」と言
いました。
 これは、和解のできない敵を誓約によって信じ、自分の安全を守ってくれるものを身から離し
てはならぬ、ということなのです。
(イソップ寓話集 山本光雄訳 岩波文庫)

Ba93 TMI.K2061.1.1 (Ba)


タウンゼント76.仔ヤギとオオカミ

 屋根の上に立っていた仔ヤギが、オオカミが通るのを見ると、口汚く罵った。するとオオカミ
は仔ヤギを見上げて言った。
「こ奴、何を言うか! 俺に悪口を吐いているのは、お前ではない。お前の立っている屋根が言
わせておるのだ」
 
 よくあることだが、時と場所が、力のある者よりも、力のない者を強くする。

Pe98 Cha106? Ba96 Hou16 Charles110 TMI.J974 (Aesop)


タウンゼント78.ヒツジ飼とオオカミ

 ある日のこと、ヒツジ飼はオオカミの仔を見つけて、連れ帰った。
 その後、しばらくたってから、ヒツジ飼は、オオカミの仔に、近くの牧場から仔ヒツジを盗ん
でくることを教えた。
 オオカミは、教わったことを完璧にこなすようになると、ヒツジ飼にこう言った。
「あなたは、私に盗むことをお教えになりました。ですから、これからは、自分の群を失わぬよ
うに、いつも目を光らせていなければなりませんよ」

悪に悪を教えるとはなんたることか!

Pe366 Cha315? BaP175 TMI.J1908 (Ba)


タウンゼント90.オオカミとヒツジ

 オオカミは、イヌに噛まれて、ひどい傷を負い、自分のねぐらで、身動きがとれずにいた。腹
を空かせたオオカミは、そばを通りかかったヒツジを呼び止めて、川から水をくんできてくれる
ようにと頼んだ。
「もし、君が水をくんできてくれたら、肉はなんとか用立てられるから。」
 すると、ヒツジはこう応えた。
「ははーん、あなたは、水だけでなく、肉も、私からせしめるつもりなんでしょう。そんなこと、
お見通しですよ。」
?
偽善者の言説は、簡単に見透かされる。

Pe160 Cha231 TMI.K2061.5 (Aesop)


タウンゼント110.オオカミとイヌ

 あるオオカミが、まるまると肥えたマスチフ種のイヌと出合った。そして、イヌの首輪を見
ると、……誰が、そんなに太らせ、そして誰がそんなに重い首輪をするようにと命じたのか?
と、尋ねた。
「ご主人様だよ」
 イヌが答えると、狼がこう言った。
「俺の知り合いには、そんな哀れな身の上の奴はいないよ。鎖の重さで、食欲などふっとんじ
まうだろうからな」

Pe346 Cha226 Ph3.7 Ba100 Avi37 Cax3.15 Hou28 Charles57 Laf1.5 TMI.L451.3 (Ba)


タウンゼント115.オオカミとヒツジ飼たち

 ヒツジ飼たちが詰め所で、ヒツジの肉を食べていた。するとそこにオオカミが通りかかった。
 オオカミは彼らを見てこう言った。
「俺がそんな真似をしたら、あんたらは、もう、大変な騒ぎをするだろうにね……」

Pe453 Charles86 Laf10.5 Kur6.1 TMI.J1909.5 (プルタルコス「七賢人の饗宴」156a)


タウンゼント158.ヒツジ飼とイヌ

 夕方、ヒツジ飼は、囲いの中にヒツジを入れて、オオカミの害から守ろうとしていた。と、
その時、イヌが、ヒツジの群に紛れ込もうとしているオオカミに気付いてこう言った。
「ご主人様、オオカミを囲いの中に入れてしまったら、ヒツジたちは皆食われちまいますよ」

Pe365 Cha317 Ba113 TMI.J2172.2.1 (Ba)


タウンゼント171.オオカミどもと牧羊犬たち

 オオカミたちが、牧羊犬たちにこんな風に話しかけた。
「君たちは、我々とそっくりなのに、どうして、気心を通わそうとしないのだ? 兄弟のように
仲良く暮らすべきじゃないのかね? 君たちと我々の違いは一つだけだ。我々は自由に生き、君
たちは、人間にへりくだって仕えている。その見返りはと言えば、鞭で打たれて、首輪をはめら
れるという始末。それに、人間たちは、君たちにヒツジの番をさせているくせに、自分たちはヒ
ツジの肉を食べ、君たちには骨を投げてやるのが関の山。どうだね我々の話に嘘はないだろう?
 そこで相談なんだが、どうだろう我々にヒツジを与えてくれないかい? そして、一緒に、げ
っぷが出るまで、食い尽くそうじゃないか」
 イヌたちは、オオカミどもの話に涎を垂らすと、オオカミの棲む洞穴へと入って行った。そし
て、ばらばらに引き裂かれた。

Pe342 Cha216 BaP159 TMI.K815.3 (Ba)


タウンゼント178.シカとオオカミとヒツジ

 シカがヒツジに、オオカミを保証人に立てるから小麦を貸してくれと頼んだ。
 するとヒツジはこう答えた。
「オオカミさんは、自分の欲しいものと見れば、襲いかかってとんずらするのがいつもの手だし、
あなただって、足が速いので、私などあっという間に置いてけぼり。支払日になって、あなた方
をどうやって見つければよいのですか?」

悪人二人が力を合わせて、善いことなどするはずがない。

Pe477 Ph1.16 Cax2.11 TMI.J1383 (Ph)


タウンゼント188.オオカミとキツネ

 ある日のこと、あるオオカミの群に、大層大きくて力のつよいオオカミが生まれた。彼は、強
さ・大きさ・速さと、どれをとっても、並外れていたので、みなは、彼を「ライオン」と呼ぶこ
とにした。
 しかし、このオオカミは、体は大きかったが、その分思慮に欠けていたので、皆が「ライオン」
と呼ぶのを真に受けて、仲間から離れて行くと、専らライオンと付き合うようになった。
 これを見て、年老いて狡知に長けたキツネが言った。
「おいおい、狼さんや、一体、どうすりゃお前さんのような馬鹿気たことができるのかね。まっ
たく、その、見栄と虚栄心ときたひにゃ……。いいかね、お前さんは、オオカミたちの間では、
ライオンのように見えるかもしれないが、しかし、ライオンたちの間じゃ、ただの狼にしか見え
ないんだよ……」

Pe344 Ba101 TMI.J952.1 (Ba)


タウンゼント194.仔ヤギとオオカミ

 牧草地からの帰り道、群からはぐれた仔ヤギが、オオカミに狙われてしまった。
 仔ヤギは逃げられないと観念すると、オオカミに向かってこう言った。
「あなたに、食われる覚悟はできました。でも、死ぬ前に一つだけお願いがあります。私が踊れ
るように笛を吹いてくれませんか?」
 オオカミは仔ヤギの願いを叶えてやることにした。
 こうして、オオカミが笛を吹き、仔ヤギが踊っていると、イヌどもがその騒ぎを聞きつけて走
って来た。
 オオカミは逃げる時に、仔ヤギをチラリと振り返ってこう言った。
「こうなるのも当然だ。屠殺しかできないこの俺が、お前を喜ばせようと、笛吹きなどに転向せ
ねばよいものを……」

Pe97<680> Cha107? エソポ2.15 Charles18 TMI.K551.3.2? K551.3.2 (Aesop)


タウンゼント200.オオカミとヒツジ飼

 あるオオカミが、ヒツジの群の後について歩いていた。しかしこのオオカミは、ヒツジを一匹
たりとて傷つけようとはしなかった。初めのうちヒツジ飼は、警戒して、オオカミの行動を厳し
く監視した。しかしいつまでたっても、オオカミは、ヒツジを噛んだり傷つけたりする素振りす
ら見せなかった。いつしかヒツジ飼は、オオカミを悪賢い敵ではなく、群の見張り役と見なすよ
うになっていた。
 ある日のこと、ヒツジ飼は町に用事が出来たので、ヒツジたちを皆、オオカミに任せて出掛け
て行った。
 ところが、オオカミはこの機会を待ちわびていたのだ。オオカミは、ヒツジに襲いかかると、
群の大部分を食い尽くした。
 ヒツジ飼が町から帰ってきて、この惨状を目にするとこう言って嘆いた。
「こんな目に会うのも当然だ。オオカミなど信じた自分が馬鹿だった」

Pe234 Cha229 Charles89 TMI.K206.1.1 (Aesop)


タウンゼント206.ロバとオオカミ

 ロバが草原で草を食んでいると、オオカミが近づいて来るのに気付いた。ロバはすぐに、足を
痛めている振りをした。
 オオカミは、ロバになぜ足を引きずっているのかと尋ねた。するとロバは、垣根を抜けようと
した時に、鋭い棘を踏んでしまったのだと答えた。そしてロバは、オオカミが自分を食べる時に、
喉を痛めたりしないように、棘を抜いてくれるようにと頼んだ。
 オオカミはそれを承知すると、ロバの足を持ち上げた。そして、棘を見つけようと、全神経を
集中させた。と、そのときロバは、蹄でもって、オオカミの歯を蹴飛ばした。そして、ぱっか、
ぱっかと逃げて行った。
 オオカミは、独りごちた。
「こんな目に遭うのも当然だ。俺はなぜ、医術を施そうとしたのだ? 親爺は、俺に屠殺の仕事
しか教えなかったというのに……」

Pe187 Cha281 PhP Ba122 Cax3.2 エソポ1.17 伊曽保2.30 Laf5.8 TMI.K566 (Aesop)


タウンゼント213.オオカミとヤギ

 オオカミは、険しい崖の上で草を食べているヤギをみつけた。しかしオオカミは、そこへ行く
ことは出来なかったものだから、そんな崖にいるのは危ないから、降りてくるようにと呼びかけ
た。そして更に、ここには、とても柔らかな牧草が生い茂っていると付け加えた。
 するとヤギはこう答えた。
「ご遠慮申し上げますわ、オオカミさん。あなたが私をご招待下さるのは、私を満腹にさせるた
めではなく、ご自分の腹を満たすためなのでしょう」

Pe157 Cha220 BaP Avi26 Cax7.19 Charles6 TMI.K2061.4 (Aesop)


タウンゼント217.オオカミとキツネとサル

 オオカミがキツネを盗の罪で告訴した。しかし、キツネは全く身に覚えがないと、その罪を否
認した。そこでサルが、この訴訟を請け負うことになった。オオカミとキツネが互いに自分の立
場を主張すると、サルは次のような判決を下した。
「オオカミ君、本官には、君が、何か取られたとは思えない。そして、キツネ君、君がどんなに
否定しようとも、それを盗んだに違いない」

嘘つきは、たとえ本当のことを言っても信用されない。

Pe474 Ph1.10 Cax2.18 Charles120 Laf2.3 TMI.B270 (Ph)


タウンゼント225.盲人とオオカミの仔

 その盲人は、動物を手で触れただけで見分けることができた。ある時、狼の仔が手渡され、そ
れが何か答えるようにと言われた。
 彼は、それに触れると、首を傾げながらこう言った。
「キツネの仔か、オオカミの仔かは断定できないがね。まあ、確実なことは、これを、ヒツジの
群に入れるとよくないということだね」

悪い性分は、小さな頃から顕れる。

Pe37 Cha54 Charles121 TMI.J33 (Aesop)


タウンゼント228.オオカミとウマ

 麦畑をうろつしていたオオカミが、畑から出て来ると、ウマに出合った。そこで、オオカミは
こんなことを言った。
「いいことを教えて上げるよ、畑の中へ行ってごらん、美味そうなオート麦がどっさりあるよ。
僕は手を着けずに君のために残しておいたんだよ。だって、君は僕の友達だろう。僕は友達が、
食べ物を歯で噛み砕いている音を聞くのが大好きなんだよ。」
 すると、ウマはこう答えた。
「もし、オオカミのが餌がオート麦だったらなら、胃袋を満たさずに耳で我慢するなんてことは
なかっただろうよ」

悪評のある人は、善行をしても、悪評がために信用を得ない。

Pe154 Cha225? (Aesop)


タウンゼント236.ライオンとオオカミとキツネ

 年老いたライオンが、病気になって巣穴で横たわっていた。あらゆる動物たちが、自分たちの
王であるライオンを見舞ったが、キツネだけは見舞いに来なかった。するとオオカミは、願って
もない機会とばかりに、キツネの奴は、支配者であらせられるあなた様を蔑ろにして、見舞いに
もやってきません。と讒言した。と、まさにその時、キツネがやって来て、その讒言を耳にした。
? ライオンは、キツネに腹を立て、うなり声を轟かせた。キツネはなんとか身を守ろうと機会を
窺ってこう言った。
「あなたをお見舞いした者たちの中に、私のように役立つ者はいたでしょうか? 実は私は、あ
なたを治す手だてを教えてもらおうと、あらゆる地方をくまなく旅して探し回ったのです。」
 ライオンはすぐに、その治療法を教えるようにと命じた。そこでキツネはこう答えた。
「活きのよいオオカミの毛皮を剥いで、その皮で身をくるんで暖めるのです」
 オオカミは、すぐに捕まえられて皮を剥がれた。そこでキツネは、オオカミに向かってにこや
かに言った。
「主人を悪ではなく、善き方に導くが肝要である」

Pe258<585> Cha205 Cax5.9 エソポ1.24 伊曽保3.6 Laf8.3 狐ライネケ3.12
TMI.K961 (Aesop)


タウンゼント238.オオカミとライオン

 夕暮れ時に、山の麓を徘徊していたオオカミは、とても長く大きくなった自分の影を見て、
こうつぶやいた。
「俺様は巨大だ。1エーカー近くはある。ライオンなど恐るに足りぬ。俺様こそが百獣の王と
して認められるべきではないのか?」
 オオカミが、このように高慢な思いに浸っていると、ライオンがオオカミに襲い掛かった。
 オオカミは、こう叫んだのだが後の祭りだった。
「ああ、惨めだ。自惚れにより身を亡ぼすとは……」

Pe260 Cha219 TMI.J411.5, K1715.1 (Aesop)


タウンゼント269.母親とオオカミ

 ある朝の事、腹を空かせたオオカミが、餌を求めてうろつき回っていた。オオカミが、森の小
さな家の前を通りかかると、母親が子供にこんなことを言っているのが聞こえてきた。
「静かにしなさい。さもないと窓から放り投げてオオカミに食わしてしまうよ」
 それを聞いたオオカミは、一日中家の前に座って待っていた。ところが夕方になると、母親が
子供をなでながら、こんな事を言っているのが聞こえてきた。
「おとなしくて良い子だね。オオカミがやって来たら、奴を殺してやるからね」
 オオカミはこれらの言葉を聞くと、飢えと寒さにうちひしがれて家に帰って行った。巣穴に戻
るとオオカミの妻が、どうして、何も獲らずに帰って来たのかと訊ねた。 
 すると彼はこんな風に答えた。
「女の言葉を信用して、無駄な時間を費やすとは、とんだ間抜けだったよ」

Pe158 Cha223 Ba16 Avi1 Cax7.1 エソポ2.40 Hou46 Charles94 Laf4.16 TMI.J2066.5? (Ba)


タウンゼント286.オオカミとライオン

 オオカミが、仔ヒツジを囲の中から盗んで巣穴に運んでいた。その帰り道のことである。ライ
オンがこれを見つて、オオカミから仔ヒツジを奪った。
 オオカミは安全な場所に立って叫んだ。
「私の獲物を奪うとは、なんてひどい奴なんだ」
 すると、ライオンがからかうようにこう言った。
「これは、お前のものなのか? 友達にもらったとでも言うのか?」

Pe347 Cha227 Ba105 狐ラインケ1.3 TMI.U21.4 (Ba)


タウンゼント296.仔ヒツジとオオカミ

 オオカミに追いかけられた仔ヒツジが、ある神殿に逃げ込んだ。
 オオカミは仔ヒツジに大声でよびかけてこう言った。
「神官に捕まったら、生贄にされてしまうよ」
 すると仔ヒツジがこう答えた。
「お前に食われるくらいなら、神殿で生贄になった方がましだよ」

Pe261 Cha222 Ba132 Avi42 Cax7.27 TMI.J216.2 (Aesop)


L’Estrange22『狼と豚』

 狼が横になっている母豚の所へやって来て、子豚たちの面倒を見てやると大変親切に申し出た。
母豚は、狼の愛情に礼儀正しく感謝を述べて言った。
「どうかお願いですから、子どもから離れて下さい。私たちから距離を置いてくれることが、一
番の親切です」

教訓
我々にとって、親切の名のもとに行われること程、危険なものはない。

Pe547 Ph6.19 Cax2.4 TMI.K2061.6 (Ph)


L’Estrange29『犬と羊と狼』

??? 犬が羊に小麦を貸したと訴訟を起こした。原告の犬は、狼と鳶と禿ワシという明確な証人を
立てて、羊に小麦を貸したことを立証した。
  被告の羊は、裁判の費用と賠償金の支払いを命じられ、債権者のために、背中の毛を売るよ
うにと強要された。

教訓
  裁判官や陪審員や証人がぐるになれば、その訴訟の理由が正しかろうが間違っていようが、
また、その請求が正当であろうが不当であろうが、そんなことは大した問題ではない。

Pe478 Ph1.17 Cax1.4 エ ソポ1.2 伊曽保2.12 Cf.TMI.Q263 (Ph)


L’Estrange31『狼と仔山羊と母山羊』

  ある朝、母山羊は新鮮な草を取りに外へ出かけようとしていた。その時彼女は、子どもに、
自分が戻って来るまで、あご髭の生えていない動物が来ても、扉を開けてはいけないと言った。
彼女が見えなくなるとすぐに、母親の注意を立ち聞きした狼が扉の所へとやって来た。そして、
母親の声色を使って、自分を中に入れるようにと仔山羊に呼びかけた。仔山羊は悪事の匂いを
かぎ分けた。すると悪い狼は、自分のあご髭を見せた。こうして、扉は狼のために開かれるこ
ととなった。

教訓
すでに知られている特徴を真似ないような詐欺師はいない。

Pe572=Ad61 Rom2.10 Gua29 Marie90 Se29? Cax2.9 エソポ2.27 L'Es31 Ernestp161 Type123
J144 J.index348 KHM5 (Ph)


L’Estrange39『狼と狐』

  狼は安楽に暮らそうと思い、さしあたりの食糧を密かに集めてため込んだ。
  すると狐が言った。
「やあ、狼さん。ずいぶんとご無沙汰していましたが、どうしていたのですか?」
  すると狼が言った。
「実はね、病気で長いこと寝込んでいたんだよ。どうか、俺がよくなるようにと祈っておくれ
よ」
  狐は狼が弱っていないことを知ると、狼のため込んだ食糧を奪ってやろうと、すぐに、羊
飼いの許へと行くと、その気があるなら、狼の居場所を教えると言った。羊飼いは狐に従い、
そして狼を殺した。狐はすかさず、狼のねぐらを手に入れた。しかし、その喜びもつかの間、
この同じ羊飼いによって狐は殺された。

教訓

詐欺師は詐欺に合うものである。彼らは自分のしたことで、同じ報いを受ける。一つのダイヤ
モンドの分け方を巡り、互いに喧嘩する泥棒を見るのは、痛快である。

Pe568 PhP Ad40 Cax3.6 エ ソポ2.43 TMI.W181.4 (Ph)


L’Estrange120『犬と狼』

 狼が、家の戸口で寝ている犬を捕まえ、噛みつこうとした。するとこの哀れな犬は、殺すの
をもう少し先に延ばしてくれるようにと唯々懇願した。
「私は今、骸骨のようにガリガリです。しかし、2.3日中にこの家で結婚式があるので、そ
の残飯で肥えることができるはずです。あなたもその方がよいでしょう? どうかそれまで我
慢して下さい。今よりも太りましたら、あなたのそのお口に進んで身を投げますから」
  狼は彼の話を真に受けて、彼を放してやった。数日後、狼はこの家へとやって来ると、玄
関を覗き見て、この前の約束を果たすようにと犬に言った。
「ああ、お友達の狼さんではありませんか。まあ、よくお聞き下さい」犬が言った。「私がま
た、誤ってドアの前で寝ていたら、その時は、結婚式まで待ってはなりません」

教訓
 経験は、一般の人々よりも、悪人に多くの教訓を与える。悪人たちは同じ過ちを二度はしな
いものだ。少なくとも、彼等は経験により前よりも狡賢くなるのである。

Pe134 Ch184 Laf9.10 TMI.K553 (Aesop)


L’Estrange130『狼とライオン』

  狼とライオンが共に、冒険の旅へと出かけた。
「ちょと聞いて下さい」狼が言った。「羊の鳴き声が聞こえませんか? 私の命はあなたに捧
げます。私は、あなたのために獲物を獲ってきます」
  狼は声の聞こえる方へと向かって行った。すると、牧場の囲いの処までやって来た。しか
し、その囲いは強固でしかもすぐ傍らで犬たちが眠っていた。そこで狼はライオンの許へとよ
たよたと引き返した。そしてこう言った。
「羊はあそこにいます。それは間違いないのですが、しかし、奴らは骸骨のように痩せていま
す。ですから、背中にもう少し肉がつくまで、奴らをそのままにしておいた方が得策です」

教訓

  人は為そうとしてどうしても出来ない時、落胆や失望に際して、無関心を装ったり、簡単
にできるがしなかっただけであるかのように言うものだ。

Ernest p213


L’Estrange155『羊飼いと狼の仔』

? 羊飼いが、狼の赤ちゃんを捕まえて、彼の犬とともに訓練した。狼の赤ん坊は、犬たちとと
もに食べ、犬たちとともに成長した。そして彼等が狼を追いかける時は狼の仔もその一員とな
った。時に、狼が逃げ去り、犬たちが仕方なく家へと帰ることがあったのだが、この狼の仔は、
狼に追いつくまで、追いかけ続けた。そして、その狼たちと共に、獲物を食べた。そうして、
主人の許へと帰って行った。たびたびそんなことがあったのだが、そのうちに、野生の狼たち
が少しの間大人しくしていると、狼の仔は、今度は自分から進んで羊を殺すようになった。し
かし結局、羊飼いが、悪事を気づき、狼の仔を縛り首にした。

教訓
  
  悪人は狼と同じで、矯正されることはない。彼等は、狼の血統、その呪われた血族を信頼
するのだ。

Pe267 Ch314? (Aesop)


L’Estrange194『傷ついた驢馬と烏』

背中をすりむいた驢馬が、牧場で草を食べていると、烏がそれを見つけて、そのただれた傷にと
まった。驢馬は振り落とそうと跳びはねて、馬方に気づいてもらおうと嘶いた。馬方は遠くか
らそれを見るとげらげら笑った。
「ああ羨ましい」そこを通りかかった狼が言った。「まったく、世の中とは不公平だ! 烏のい
まとまっている場所に、腹ぺこの狼がいたならば、血相を変えて追いかけて来るだろうに……烏
がすれば、笑い事だが、同じ事でも狼がすれば命がけだ!」

教訓

馬を盗もうと垣根を調べているうちに、別な者が上手に馬を盗んで行く。

Pe190 Ch274? (Aesop)


Ernest p142『狼と驢馬』

? ある日、狼たちは仲間の中から首領を選んだ。選ばれた狼は、最もらしく、弁舌をふるう悪党
で、首領に選ばれてから間もなく、狼の集会で次のような演説をした。
「大切なものは」彼が言った。「ただ一つである。それが、我々の福祉に大いに役立つのだ。こ
のことは、言い過ぎるということはない、是非とも君たちの胸の中に刻み込んでもらいたいこと
なのだ。 真実の兄弟愛で労ろうとする者がいるだろうか? 利己主義を抑えて、皆のためによ
いことをしようとする者がいるだろうか? そこでだ、それぞれは、自分が獲た獲物は何であれ、
隣人の腹を空かせた兄弟に分け与えるのだ」
「おい、おい!」その話を聞いていた驢馬が叫んだ。「勿論それは、お前さん自身のことも言っ
ているんだろうな! じゃあ、昨日、お前さんが巣穴のすみに隠した、まるまると太ったヒツジ
から始めたらどうだ?」

Pe384 Ch228? BaP154 TMI.U37


Ernest p198『狼と狐』

? ある日のこと、狐が狼に言った。
「ねえ、お友達の狼さん。あなたは、私がしょっちゅう食べるのに困っていることを知っていま
すか? 恐ろしく力の強い老獪な雄鶏や痩せこけてひからびた雌鶏を、苦労してやっと手に入れ
るのが関の山なんです。ところが、あなたは、私どもよりもずうっとよい暮らしをしているし、
危険もずうっと少ないようにお見受けします。私は人家のまわりをうろつかなければなりません。
しかし、あなたは草原でずっとよい獲物を得るのです。どうかあなたのやり方を教えて下さい。
太った羊を思うが儘に狩ることのできる、史上初の狐にして下さい。あなたが、教えてくれれば、
あなたのよき仲間になります。そうすれば、結局あなたの得にもなるのですよ」
「よしわかった」狼が言った。「それに、俺はちょうど弟を失ったところだったのだ。向こうに
弟の亡骸があるのだ。彼の毛皮の中に入るのだ、そしたらまた俺の所へやって来い」
  狐は狼に言われた通りにすると、狼は狐に、うなり声や噛み方や戦い方、そして立ち居振る
舞いなど、あらゆることを教えた。狐は初めはうまくできなかったが、その後上達し、終いには、
先生と全く同じようにうまく出来るようになった。丁度その時、羊の群が目前にあった。すると、
狼となった狐は、群の中へと突撃した。羊飼いの少年や犬や羊たちは、恐怖に駆られて、大声で
喚きながら小屋へとげ去った。一頭だけ後に取り残された羊は喉を噛まれた。と、その時、近く
の農場で雄鶏が甲高い声で鳴いた。狐は慣れ親しんだ声に抵抗出来ずに、狼の毛皮をかなぐり捨
てると、教わったことや、羊のこと、先生のことも忘れて、猛然と雄鶏に向かって走り出した。
 
 狐が狼となる世界初の偉業はこうして潰えたのであった。

Laf12.9 TMI.J1908.2


伊曽保物語 下 十 狐と狼の事

? ある狐、子を設けるるに、狼を畏れて名付け親と定む。狼、承て、その名を、「ばけまつ」とつ
けたり。狼、申けるは、「其子を我そばにおいて学問させよ。恩愛の余り、みだりに悪狂いさすな」
と云えば、狐、「げにも」と思い、狼に預けぬ。
? 狼、このばけまつを連れてある山の岳にあがり、わが身はまどろみ伏したり。「けだもの通らば
起こせよ」と云いつけたり。さるによて、豚、その辺を通る程に、ばけまつ、狼を起こして是を教
ゆ。狼、申けるは、「いさとよ。あの豚は、毛もただ強くして口をそこなう物也。これをばとるま
じき」と云う。又、牛を野外に放すほどに、ばけまつ、教えければ、狼、申けるは、「是も牧羊犬
など云う物多し。とるまじ」と云う。又、牝馬の有るを教えければ、「これこそ」とて、走りかか
って首をくわえて我本にきたり、子のばけまつもともに食いてんげり。
? 其後、ばけまつ、いとまを乞いければ、狼申けるは、「未だ汝は学問も達せず。今しばらく」と
て、留めけれども、「いな」とて、まかり帰る。母狐、これを見て、「なにとて早く帰るぞ」と云
いければ、「学問をばよく究めてこそ候へ。その手並みを見せ奉らん」とて、山野にいづ。狐、豚
を見て、「これをとれかし」と教えければ、「あれは、毛ただ強き物にて口の毒なり」とて、とら
ず。牛を教えければ、「牧羊犬など云うものあり」とて、とらず。牝馬を教えければ、ばけまつ、
申けるは、「あなうれし、これこそ」とて、狼のしたるごとく、首にとびかかりければ、結局馬に
くらい殺さる。母悲しむ事限りなし。
? そのごとく、いささかの事を師匠に学びて、いまだ師匠も許さぬに、達したると思うぺからず。
この狐も年月を経て狼の仕業を習はば、かかる聊爾なる業はせじとぞ。

Pe704 Cax5.14 TMI.J2413


Ernest p244『変装した狼』

? 狼は、近所の羊の群を度々襲ったので、羊たちに面が割れてしまった。そこで狼は、獲物をう
まく奪いさるには、変装するのがよいと考えた。そこで、狼は羊飼いに変装した。彼は、前足で
杖につかまり身を支え、ゆっくりと羊の囲いへと向かった。羊飼いや番犬たちは草の上で大の字
になってぐっすりと眠っていた。狼の企ては上手く行くかに見えた。しかし、狼は軽率にも、羊
飼いの声を真似ようとしたのだ。その恐ろしいうなり声で、彼らは目を覚ました。狼は進退これ
窮まり、あっさりと番犬の餌食となった。

Laf3.3(Verdizotti)


ペリー593『井戸の中の狐と狼』

 ある狐が井戸汲みバケツに乗って井戸の底へと降りていったことがあった。そこへ狼がやって
きて、そんなところで何をしているのかと尋ねた。
「おお兄弟よ」その狐は答えて、「ここで、魚をたくさんとっているのです。それも、でかいや
つばかりだよ。君も僕と一緒にこいつらを捕まえたらどうだい」
すると狼のイゼングリムが言った。
「どうやってそこへ降りて行けばいいのだ?」
すると我らがちび狐が答えた。
「頭の上に、バケツがあるでしょう? その中に入って降りてくればいいよ」
この井戸には、二つのバケツがついていて、一つが上がると一方が下がるというような仕組みに
なっていた。こうして、狼は上にあったバケツの中に収まると、井戸の中へと降りて行った。一
方ちび狐はもう一方のバケツに乗り込み上って行った。そして、両者が途中ですれ違った時、狼
が言った。
「やあ、兄弟、君はどこへ行くんだね?」
すると狐が答えた。
「僕は十分に食べたので、上に戻るんだよ。さあ、下へお行き、素晴らしいものが見つかるから」
こうして、間抜けな狼は井戸の底へと降りて行った。しかし、水以外は何も見つからなかった。
こうして、朝になり、農夫たちがやって来て、狼を引っ張り出すと、殴って殺した。

Pe593(Odo of Cheriton)? Cax8.9 Laf11.6 J.index581 AT32=TMI.K651


ペリー596『狼を告発する羊』

 羊たちが動物の王であるライオンに、狼の非道についての不満を述べた。それは、狼があらゆ
る機会を狙って仲間の羊をひっつかまえては食べていると告発するものだった。
 ライオンは議会を召集し、豚やその他の動物たちに、狼の振る舞いについて尋ねた。まず、豚
たちが答えた。
「狼は、寛大で気前のよい立派な方です」
豚たちがこう言ったのは、狼が羊を強奪すると、豚たちを招待してもてなしていたからだった。
「羊たちの訴えとは違っていおるな」ライオンはこう言うと、更に続けた。「羊たちの訴えに耳
を傾けてみようではないか」
すると一匹の羊が大声でこんなことを言った。
「我が主君よ。この狼は、私の両親と息子を奪い去ったのです。私自身は命辛々逃げ延びたので
す」
そして、他の羊たちも同じことをまくし立てた。ライオンは訴えを審理すると、次のように言い
渡した。
「狼には絞首刑を、また、それが何であるかを知って食べた豚たちも同罪である」
そして、刑が行使された。

Pe596(Odo of Cheriton) TMI.B272.1 B275.1.3.2 Q263


ペリー607『狼の葬儀』

 狼が死んだ時、動物の王であるライオンは、動物全員を集めて、狼の弔いの儀式を
行わせた。兎は聖水を、鷺たちは棺に安置された死体を運び、熊はミサを指揮し、雄
牛は福音書を驢馬は師徒書を読み上げた。ミサが滞り無く行われ、狼が埋葬されると、
動物たちは、故人の遺産で豪勢な饗宴を催した。そして皆、自分の時もこのような葬
儀が行われるのを願った。
 このように、金持ちの泥棒やゴロツキが死ぬと、大修道院長自らが、彼らの死を悼
んで大きなミサを召集する。ミサを取り仕切っている連中はと言えば、大概死者と同
じくらいの悪党である。

Pe607(Odo of Cheriton) TMI.B240.4 B253 B257 AT2021


ペリー616『狼と戦う兎』

? 兎は狼と決闘することに同意した。狼が、まちがいなく自分が勝つだろうと当て込
んで賭けに応じたのだ。
二匹が、草原であいまみえた時、兎は素早く跳んで逃げた。狼は兎に襲いかかろうと
したが、どうにもならず、疲れきって地面に崩れ落ちた。この戦いに、狼は不満であ
ったが、兎は、走りっこの戦いをしたのだと主張して、自分の勝利を宣言した。
「こんな風に、私は、しょっちゅう犬と戦って勝利するのですよ。そして今度は、あ
なたをやっつけた。さあ、負けた分を払ってくださいな」
この後、この論争の決着は、ライオンに委ねられることとなった。そしてライオンは、
狼に負けを認めさせた。

Pe616(Odo of Cheriton) TMI.B264


ペリー625『魚を捕る狼と狐』

? 狼が、狐に出会い、何処へ行ってきたのかと尋ねた。すると狐が答えた。
「池で、上等な魚を捕まえて、たらふく食べてきたところですよ」
狼が、どうやって魚を捕まえたのかと尋ねると、狐はこう答えた。
「尻尾を水のなかに垂らして、長いことそうしているのです。魚たちが、尻尾を餌と思
って、食いついてきたら、地面に引き上げるのですよ」
「俺も、できるだろうか?」狼が尋ねると、
「もちろんですとも」と狐が答えた。「力が強いのですから、私などよりも沢山捕れま
すよ」
こうして狼は、魚の棲む池へと急ぎ、尻尾を水の中に垂らした。水は大変冷たかったが、
狼は辛抱強かった。かなりの時間が過ぎ、たくさん魚が、狼の尻尾に食いついた。そこ
で、狼は尻尾を引き抜こうとした。が、しかし、尻尾は抜けなかった。尻尾はカチンコ
チンに凍りついて、狼は池に捕まえられてしまった。朝が来て、人間たちがやってきて、
狼を死ぬほど殴りつけた。狼は、命辛々逃げ失せたが尻尾を失ってしまった。
 狼は狐を呪った。魚が捕れると請け合った、その結果は、撲ちのめされて、ひどい怪
我。

Pe625(698)(Odo of Cheriton) TMI.K1021? AT2 Cf.Kry9.4


その他 Pe=ベリー Laf=ラ・フォンテーヌ Kry=クルイロフ

Pe38『農夫と狼』 Pe159『狼と羊』 Pe209『羊飼と狼の仔』

Pe343『狼と犬の戦争』 Pe345『罠の側の狼と狐』

P392『病気の驢馬と狼のお医者』 Pe404『猟師と狼』

Pe407『狼を追う犬』 Pe417『狼教師と鶏』



Laf8.27『狼と狩人』 Laf12.17『狐お狼と馬』』


Kry2.8『猟犬小屋の狼』 Kry2.17『狼と郭公』

Kry3.5『狼と狼の子』 Kry3.19『牝鹿と托鉢僧』

Kry4.3『狼と狐』 Kry5.14『ライオンと狼』

Kry7.19『狼と子鼠』 kry8.19『狼と猫』

Kry9.1『羊飼い』 Kry9.5『狼たちと羊たち』


この他、狼の出てくる寓話は多数。少なくとも120話以上あります。



略記号:
Pe=ペリー版 Cha=シャンブリ版 Ph=パエドルス版 Ba=バブリオス版
Cax=キャクストン版 エソポ=エソポのハブラス 伊曽保=仮名草子「伊曽保物語」
Hou(Joseph Jacobs?)=ヒューストン編  Charles=チャールス版 Laf=ラ・フォンテーヌ寓話
Kur=クルイロフ寓話 Panca=パンチャタントラ
J.index=日本昔話通観28昔話タイプ・インデックス TMI=トムスン・モチーフインデックス
<>=cf ( )=系統 Aesop=ペリー 1〜273に属する寓話


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