これであなたもイソップ博士

 

ここでは、イソップ寓話全般についての、基礎知識をお話します。



 

1.イソップは実在の人物か?

2.イソップ寓話の韻文化

3.イソップ寓話について

4.日本におけるイソップ寓話

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  • 1.イソップは実在の人物か?

    イソップは紀元前6世紀頃、ギリシアに実在した人物で、サモス人イアドモンの奴隷

    であったと言われています。この辺の所は、ヘロドトスの『歴史』という本に載ってい

    るので、ほぼ間違いないとされています。しかし、それ以外のことは、ほとんど何も分

    かっていません。

    ですから、イソップが何処で生まれたか? ということも、はっきりしていません。

    小アジアで生まれた? アフリカで生まれた? ギリシアで生まれた? どれもこれと

    いった決め手がないのが現状です。

    実は、イソップ寓話集の中で、確実にイソップの作であると確認されているものは、一つ

    もないのです。

    つまりイソップ寓話集とは、世間に流布し、語り継がれてきた寓話を、イソップの名の元

    に、編纂したものと、言えるかもしれません。

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  • 2.イソップ寓話の韻文化 

    イソップ寓話は、口承伝承から次第に編纂されていったものなのですが、この散文的

    な寓話を、韻文化して、文学的に高めようとする試みが、早くからなされています。

    そのさきがけは、ソクラテスと言われていますが、そのテキストは、確認されてはいませ

    ん。 

    その後、紀元前18年頃、ギリシア北辺のトラキア地方に生まれたパエドロスが、イソップ

    寓話集の韻文化を行っており、これが、現在目にすることのできる、最古の韻文化された

    テキストと言えます。更に1世紀の後半にはバブリオスが韻文化を試みています。 

    時代が下り17世紀には、フランスの作家ジャン・ド・ラ・フォンテーヌが、続いて18世紀

    には、ロシアのクルイロフが、韻文化の傑作を世に送り出し、現在に至っています。

     

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  • 3.イソップ寓話集について

    現存するイソップ寓話集の中で、一番古いものとされているのは、アウクスブルク校訂本と

    呼ばれるもので、13世紀ないし14世紀の写本なのですが、その祖本は、1.2世紀に溯る

    とされています。

    更に、この祖本は、紀元前300年頃に、イソップ寓話を最初に編集したと言われる、デメトリ

    オス版の原型を留めるものとも言われています。そして、我々が現在目にするイソップ寓話

    集は、この写本を基に、さらにいくつかの話を取り入れて編集されたものであり、編集者の名

    前をとって、ハルム版、シャンブリ版、ハウストラート版、ペリー版などがあるのですが、日本

    では、シャンブリ版がつとに有名で、現在日本で出版されているイソップ寓話集は、ほとんど

    が、このシャンブリ版に依っています。 (イソップ童話はこの限りにあらず)

    しかし、1999年の3月に、中務哲郎訳のペリー版イソップ寓話集が、岩波文庫より出版され

    たために、日本の標準は、シャンブリ版からペリー版へと移行して行くものと思われます。

    ところで、アウクスブルク校訂本が、広く認知される以前までは、15世紀にドイツのシュタイン

    ヘーヴェルが編集した、シュタインヘーヴェル版が広く世間に流布していました。ランスでは、

    ジュリアン・マッショが、このシュタインヘーヴェル版をフランス語に翻訳し、更にこのフランス語

    版を基に、カクストンが英訳をし・・・この他、オランダ、スペインなどでも盛んに、シュタインヘー

    ヴェル版の翻訳がなされたようです。
     

      

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      4.日本におけるイソップ寓話

     日本におけるイソップ寓話は、早くも、16世紀に、イエズス会の宣教師によりもたら

     され、1593年、天草学林(コレジヨ)において、宣教師の日本語学習用テキストとし

     て出版されました。これはローマ字で書かれた口語文で、一般に、キリシタン版『エソポ

     のハブラス』と呼ばれています。

     そしてこの『エソポのハブラス』は、ヨーロッパ文学、邦訳の、記念すべき第一号で、現

     在この版は、大英博物館に一冊だけ残されています。

     その後、漢字仮名使用文語文、いわゆる古活字版『伊曽保物語』が慶長・元和(1596−1624)

     の頃出版されるのですが、このテキストと『エソポのハブラス』は、共通する部分も多い

     のですが、明らかな違いもかなりあり、両者を含む親本が存在するものと想像されています。

     その後、古活字版『伊曽保物語』は、一枚板製版による絵入り本として万治2年(1659)に出

     版されます。これは一般に万治本と呼ばれています。

     江戸時代中期以降は、次第にイソップ寓話は世間から忘れ去られてしまうのですが、明治

     になって今度は、イギリスのチェンバーズ、トマス・ジェームス、タウンゼント、チャーリス・

     スティッキニーなどの版から、福沢諭吉、渡辺温、田中達三、元木貞雄などにより翻訳され、

     教科書などにも積極的に取り入れられることに なります。

     (これらの版は、シュタインヘーヴェル版とは系統が違う)

     恐らくは、これらの、新訳に触発されてか、朝野房などにより、旧訳の『伊曽保物語』の

     再版も試みられています。

     そして、昭和17年に、山本光雄により、シャンブリ版が翻訳され、第二次世界大戦後、こ

     のシャンブリ版などを基に、日本の児童文学者による夥しい数の、翻案が出版され、現在に

     至っています。

     
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