現存するイソップ寓話集の中で、一番古いものとされているのは、アウクスブルク校訂本と
呼ばれるもので、13世紀ないし14世紀の写本なのですが、その祖本は、1.2世紀に溯る
とされています。
更に、この祖本は、紀元前300年頃に、イソップ寓話を最初に編集したと言われる、デメトリ
オス版の原型を留めるものとも言われています。そして、我々が現在目にするイソップ寓話
集は、この写本を基に、さらにいくつかの話を取り入れて編集されたものであり、編集者の名
前をとって、ハルム版、シャンブリ版、ハウストラート版、ペリー版などがあるのですが、日本
では、シャンブリ版がつとに有名で、現在日本で出版されているイソップ寓話集は、ほとんど
が、このシャンブリ版に依っています。
(イソップ童話はこの限りにあらず)
しかし、1999年の3月に、中務哲郎訳のペリー版イソップ寓話集が、岩波文庫より出版され
たために、日本の標準は、シャンブリ版からペリー版へと移行して行くものと思われます。
ところで、アウクスブルク校訂本が、広く認知される以前までは、15世紀にドイツのシュタイン
ヘーヴェルが編集した、シュタインヘーヴェル版が広く世間に流布していました。ランスでは、
ジュリアン・マッショが、このシュタインヘーヴェル版をフランス語に翻訳し、更にこのフランス語
版を基に、カクストンが英訳をし・・・この他、オランダ、スペインなどでも盛んに、シュタインヘー
ヴェル版の翻訳がなされたようです。